【詩 形】 七言律詩
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【押 韻】 平水韻上平五微
(衣・歸・稀・飛・違)
○○●●●○○,(韻)……衣
●●○○●●○。(韻)……歸
●●○○○●●,
○○●●●○○。(韻)……稀
○○●●○○●,
●●○○●●○。(韻)……飛
●●○○●○●,
●○○●●○○。(韻)……違 |
【通 釈】
朝廷から戻ってくると、毎日のように春着を質に入れ、
いつも、曲江のほとりで泥酔して帰るのである。
酒代(さかだい)の借金は普通のことで、行く先々にある。
この人生、七十まで長生きすることは滅多にないのだから、
今のうちにせいぜい楽しんでおきたいのだ。
花の間を縫って飛びながら蜜を吸うアゲハチョウは、奥のほうに見え、
水面に軽く尾を叩いているトンボは、ゆるやかに飛んでいる。
私は自然に対して言づてしたい、
「そなたも私とともに流れて行くのだから、ほんの暫くの間でもいいから、
お互いに愛(め)で合って、そむくことのないようにしようではないか」と。
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【語 釈】
朝囘……朝廷から帰る。 點……質に入れる。
江頭……曲江のほとり。「頭」は、ほとり。
酒債……酒代の借金。 尋常……あたりまえで、珍しくない。
穿花……花の間を縫うように飛ぶ。一説に、蝶が蜜を吸うために花の中に入り
込む。
キョウ蝶……(キョウチョウ) あげはちょう。また、蝶の仲間の総称。
深深……奥深いさま。
點水……水面に尾をつける。トンボが水面に尾をちょんちょんつけるさま。
蜻テイ……(セイテイ) とんぼ。
款款……(カンカン) 緩緩に同じ。ゆるやかなさま。
傳語……言伝(ことづ)てする。 共流轉……私とともに流れていく。
私とともに移り変わっていく。
相賞……お互いにめでる。一説に、「相」は動詞に冠して、その動詞の及ぶ
対象のあることを示す接頭語。「お互いに」の意はないとする。
(王維の詩「竹里館」の「明月来相照」の「相」と同じとするわけです。)
「賞」は、めでる。ほめる。
相違……お互いにそむきあう。一説に、「相」は「相賞」の「相」と同じで、
単に「さからいそむく」の意とする。
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