【詩の解釈】
◆ 空山不見人:人気のない秋の終わりの寂しい山には人の姿が見受けられない(が)。
・空山:人気のない寂しい山。秋、冬季の落葉後の寂しげな山。
・不見:見られなくなった。見つけられない。見かけない。
・人 :人影。
◆ 但聞人語響:ただ人の話し声だけが聞こえてくる。
・但聞:ただ…だけが聞こえてくる。
・人語:人の話し声。
・響 :響く。響きを言い表しながら、静かさの程度を描写している。
◆ 返景入深林:夕日の照り返しが奥深い林に射し込んできて。
・返景:中国では“fan3ying3”と発音され、夕陽の光。日の照り返し。夕映え。
「返景」は「返影」の意味で解釈される。〔えい;ying3〕かげ「影」≒「影」字。
・漢語の「景」は〔けい;jing3〕で、太陽、日光、風景、景色の意であり、
日本では「へんけい(返景)」と読まれ、「夕映えの景色」「水に映った景色」と
いった風に誤解されやすい。
・返:かえる。返す。≒「反」字。
・入:ここでは、日が落ちかかって斜めになった日が、天を掩うようにして繁った
枝葉の横から射し込むさまをいう。(夕刻にのみ見られる新鮮な光景を詠う。
・深林:樹木が茂った奥深い林。
◆ 復照青苔上:(日中の高い日射しは、枝や葉に遮られて深い林の中には射し込まないが、
夕刻、日が斜めに射すようになると、朝の斜光と同じように)また(森の中の)
苔の上を照らすようになった。
・復 :また、ふたたび。「復-(動詞)」で語調を調える働きがあり、その意味で
六朝期の詩には極めて多く使われた。陶淵明の作にも多用されている 。
必ずしも「再び」の語義を穿鑿する必要がない。
・青苔:青々とした色のコケ。 *深林の奥深さの形容でもある。
・上 :…の上に。 *「復(ま)た青苔を照らして上(のぼ)る」と読むのもあるが、
詩の構成から見ても、詩意からみても、ここは動詞「上(のぼ)る」の意ではない。 |