三游洞に遊ぶ 蘇 軾 凍雨霏霏として 半ば雪と成る 游人屨冷ややかにして蒼苔滑らかなり 辞せず被を携えて 巌底に眠ることを 洞口 雲深くして夜月無し |
【詩形】 七言絶句 【脚韻】 雪・滑・月 【語 釈】 三 游 洞 今の湖北省宣昌市の西北にある鍾乳洞で、唐のは白居居が弟の行簡(こうかん) と友人の元稹(げんしん)とここに遊び『三游洞記』を作った。 凍 雨 みぞれ。 霏 霏 しきりに降るさま。 游 人 旅人。ここでは蘇父子のこと。 被 寝衣 |
【作 者】蘇 軾(そ しょく) 北宋(1036-1101)眉山(四川省)の人、字は子瞻(しせん)、 号は東坡。21歳のときに父洵に従って弟轍と共に上京し、 翌年進士に及第して文名一時にあがった。 中年以降は王安石の新法に反対したため二度も左遷され地方の 知事を歴任、神宗に ・・・。 父蘇洵(そじゅん)・弟蘇轍(そてつ)と共に三蘇と呼ばれ 散文の大家として知られる。 書画にも巧みであった。 |
【通 釈】 降りしきるみぞれが何時しか雪に変り、くつもすっかり冷えきって苔むした岩の上は滑って 思うように歩けない。 唐の白居衣の故事を思い、寝衣を用意しているので洞内に眠ることも辞さないが、 洞口には雲が深く垂れ込めている。 もう、今夜の月は見られそうにない・・・ 【三游洞について】 三游洞は中国湖北省の絶壁にある洞窟の名称。 洞窟からの眺めが大変素晴らしいという。 宜昌市から10kmの所にある。洞窟内の広さは約20m、 奥行きは約30mで前後に部屋がある。 唐代詩人の白居易、元微之、白行簡の3人がここを 訪れ「前三遊」と呼び、 宋代の文学者蘇洵、蘇軾、蘇轍、父子の3人もここを 訪れ「後三遊」と呼ばれる。 結句に現れている、「洞口 雲深くして夜月無し」に 蘇軾の無念の想いを乗せて吟じたい・・・ |