夜雪 白 居易 巳に訝る 衾枕の冷ややかなるを 復た 見る窗戸の明らかなるを 夜深くして 雪の重きを知る 時に 聞く折竹の聲 |
〔詩形〕 五言絶句 平水韻下平八庚【語 釈】 已 =とっくに、すでに。 訝る =いぶかる、不審に思う。 衾枕 =しとねとまくら。夜具をさす。 窗戸 =まど。 復見窗戸明=その上また、窓の外が明るくなってきたのが見えてきた。 時聞 =時々、聞こえてくる。 折竹声=雪の重さで竹の折れる音をさす。 |
【白 居易】白居易(はくきょい、772年(大暦七年)~846年(會昌六年)、下邽(陝西省)の中唐期の詩人。字は楽天(らくてん)。号は香山居士など。 左拾遺となり、詩によって政治を議論し江州の司馬に左遷された。 のち、刑部尚書で致仕、尚書右僕射を歴任する。 「李杜韓白」と並び称された、抒情詩人。 |
【詩の心】どうしたのだろうか、今夜の夜具が冷たいのは、その上見れば夜であるのに窓が異様に明るい。夜もすっかり更けて、雪は相当重く降り積もったことであろう。耳をすますと時々竹の折れる音が聞こえてくる。 雪の降る静かな夜を歌った詩である 第一区は夜具の冷たさの感触、 第二句は窓の明るさで視覚に訴え雪の降っていることを示し、 さらに結句で、その雪が積もったことを竹の折れる音で聴覚の面から歌っている。 この音を配することによって、雪が音もなく降る静かな夜であることを、さらに印象づけている。 また、雪を歌った詩は柳宗元の「江雪」などと少なくないが、この詩は視覚や聴覚などによって間接的に歌っているところに特色がある。 |
静かに降る雪の怖さを詠じてみたい。
(メディアプレイヤーで再生)