十五夜 月を望む 王 建 中庭 地白くして 樹鴉を棲ましめ 冷露声無く 桂花を湿す 今夜月明 人尽く望む 知らず 秋思 誰が家にか在る |
【詩形】 七言絶句
【脚韻】 下平声麻韻(鵜・花・家)
【語 釈】 十五夜 旧暦八月の十五夜。中秋の名月。 中 庭 母屋の前にある庭。 地 大地。 棲 すむ。「栖」と同じ。 桂 花 木犀の花。 中国の伝説に月には桂樹が生えていると言われていることから、桂を出したのであろう。 不 知 ・・・・だろうか。 秋 思 秋の悲しい物思い 誰 家 だれ。 |
【作 者】王 建(おう けん) 中唐(767?-830?)潁川(河南省許昌)の人、字は仲初、 代宗の時に進士に及第し、渭南県尉より太府寺丞・秘書丞・侍御史を歴任、文宗の大和二年(八二八)には陝州の司馬として転出した。 また、辺境に従軍したこともあるが、内地に帰ってからは長安西北の咸陽に住んだ。 詩を能くし、特に楽府の名手として知られる。 |
【通 釈】 中庭の地面は名月の光を受けて白く輝き、庭樹は鳥に良きねぐらを与えている。 月の光によって生じた露は、しっとりと木犀の花を湿す。 今宵の満月を人はことごとく眺めていることであろうが、 さてこの月を見て、秋の夜の物思いにふける人は、いったい誰だろうか。 |
十五夜の晩、中秋の名月を見、秋思の情を詠んだ詩である。 『全唐詩』には「十五夜望月寄杜郎中(十五夜月を望み、杜郎中に寄す)と題している。 とすると、 郎中の職にある杜氏に贈った詩ということになり、第四句「誰家」を指すことになる。 |